明るい一揆 in 出石 1日目
2023年12月9、10日に兵庫県豊岡市出石町で「明るい一揆in出石」が開かれました。
大勢の地域住民らが参加!近畿地方で最古の芝居小屋「出石永楽館」などに集まり、2日間楽しいイベントを通して但馬の未来について考え、地域の絆を深めました。
そもそも「明るい一揆」とは…
地域の課題を明るく、楽しく考えて解決していこう!と始まったのが明るい一揆です。
今後30年で人口が半減すると予想されている但馬。ただ介護を必要とする人は減らず、一般診療所の医師や介護業界の人材不足が課題となっています。
末永く、但馬で住み続けるにどうしたらいいか―。
そこで手を組んだのが医療、介護、福祉、行政の関係者ら。そのほかにも大勢の人が連携し、楽しみながら課題解決に取り組もうと動き出しています。
9日にまず行われたのは「決起集会」です。
集会のはじめ第一幕「明るい一揆宣言」では、但馬を元気にしようと奮闘する方々が地域の課題に明るく立ち向かうことを宣言!全員で士気を高めました。
第二幕「社会落語」では、但馬出身の笑福亭鶴笑さんが、手足に付けたパペット(操り人形)を使い、一揆で但馬が活性化する話を披露。笑福亭鶴笑さんの軽快な話術やパペットのアクロバティックな動きに、お客さんは終始笑顔!会場は一気に明るい雰囲気に包まれました。
温まった会場はそのままに、第三幕「明るい一揆のすすめ」へ。
DJが流す心地よい音楽の中、九州大大学院人間環境学研究院専任講師の田北雅裕さん、グラフィックデザイナーで企画プロデュサーのステレオテニスさんが登壇。それぞれデザインの点から福祉課題などに取り組んできた経験を話し、明るい一揆に生かせるヒントとなりました。
聞き手には松﨑亮さん(宮崎県・三股町社会福祉協議会)と千葉義幸先生(但馬を結んで育つ会の代表理事/ちば内科・脳神経内科クリニック院長)が参加しました。
田北さんは、デザインの観点から主に子ども家庭福祉の課題を乗り越えていくための実践・研究に取り組んでいます。福祉は相談する人、される人がいて、相談される人のスキルを伸ばすことに力が注がれますが「ホームページ(HP)などで、適切なデザインがされていないと相談支援につながらない」と指摘。「HPやパンフレットは、相談に至らない人に接して行動を変えることを促したり、励ましたりできる可能性がある。デザインはケアそのもの」と話しました。
またデザインが生かせる一つに、相談する人、される人の間に入るソーシャルワーカーら「間」の部分にもあるとします。実際に「間」に関して取り組んだこととして、里親家庭の子どもが、里親を理解するカードキット作りに参加したと紹介。当初は子どもが対象のガイドブックデザインが依頼だったといいますが「リサーチの結果、教科書のようなものではなく里親と子どもの関係性を育むものが必要と考え、カードキットを作ることとなった。楽しくゲームをしながら子どもの声を聞き、悩みを把握できれば」と話しました。
ステレオテニスさんは、地元での活動を通して「地方には人口減少、空き家など多くの困りごとがあるが、そこに価値を感じた」として、家族の困りごとを「実験台」に価値を検証したと紹介。実家のすし屋が閉店するにあたり「両親がこれまでの経験を生かし、楽にできることはないか」と考え、すし屋が作るだし巻き卵に注目。サンドイッチにして売り出し、ステレオテニスさんはロゴなどを担当してマルシェに出したところ大好評だったといいます。職人気質の父親は当初乗り気ではなかったといいますが、マルシェで完売したのを見て納得。「サンドイッチ作りという穏やかなペースで社会と関わる機会ができた。すし屋でしか作らないだし巻き卵は、高度なスキル。そこの再検証は違う視点が入らないと分からないと思う」と話しました。
最後に「人口減少など地方の問題は大きく、どこから取り組めば良いかわからないと感じる。だが家族などマクロに落とし込んで考えていき、身近な人を楽しくすることが街づくりにつながるのではないか。自分のできることや技術は、他者から見つけてもらうといい。壮大なことをせずとも、できることはある」と話しました。
松﨑さんは「人口が減少し、医療も届かず大変という受け取りをするとそういう街になる。でも例えば、ちょっとしたことを身の回りで変えていくことができる。この一揆を一過性ではなく、日常にしていけたら。面白いことをしている人が増えると面白い街と受け取られる」、千葉先生は「デザインやHPなどを通して、取り組みの面白さが伝わり、人が集まってくると感じた。また物事の見方を変えると同じことでも輝いて見えると分かった。この2つが合わさると、地域に新しい価値が生まれると思う」と述べました。
最後は、ドクター酒場でプチ打ち上げ!参加者や関係者らがお酒を片手に、ざっくばらんなお喋りを楽しみました。決起集会に参加した人たちは…「欠点が長所になるような見方を教えてもらった。日常から変えていきたい」(40代女性、福祉関係者)、「明るい一揆は…まだ正直よく分からないが、街を良くするには住民が主体にならんといかん。これからだなと思った」(80代男性)、「このようなイベントに社会落語を入れるアイデアが凄いと思った。楽しみながらさまざまな物の見方を教えてもらった」(60代男性、証券会社勤務)、「福祉は課題だらけで先を考えると暗くなっていた。だが切り口や考え方を変えて、楽しいことを見つけていくことから始めたら、課題解決に向かうと思った。光が見えた」(30代男性、福祉関係者)、「但馬を楽しく元気にできるよう、横のつながりを作る役目をしたい」(50代男性、医療関係者)
など、さまざまな声が聞かれ、充実した時間を過ごせたようでした。但馬で安心して、楽しく暮らし続けたい―。その思いをいつまでも守れるよう、住民の士気を高めた初日の夜が終わりました。